2013年07月17日
金網の向こう側を派手なポロシャツ姿の若者たちと迷彩服の兵士とが入り交じって行き来する不思議な光景だった。米国メリーランド州フォートミードにある国防総省所属の国家安全保障局(NSA)本部。IT企業から通信情報をこっそり収集していたとして有名になった情報機関だ。
ワシントンDCの中心から車で1時間弱。森林を切り開いて造った施設の広大な駐車場はほぼ満員で、職員の規模が大きいことを物語る。よく見るとあちこちに監視カメラが。たたずんでいるうちに、次第に「NSA警察」の車両が周囲に目につくようになって、早々に引き返した。
NSAは第二次世界大戦後の1952年に設立。63年、首都がミサイル攻撃を受けても情報収集を続けられる場所として、もともとあったDCからここに移転したという。
政府がその存在を公式に認めたのは75年。地元の人は「だからNSAはノー・サッチ・エージェンシーの略と言われるよ」と教えてくれた。「そんな機関は存在しない」という意味だ。「ネバー・セイ・エニシング(何も言わない)」とも皮肉られるという。
だが、中央情報局(CIA)元職員がその活動内容を明らかにし、国際社会を揺さぶっている。これを機にNSAのあり方も変わっていくのだろう。(斉場保伸)