2013年08月01日
国王がいて、石油がたくさん採れる国。大変失礼な話だが、事前に知っていたのはその程度だった。
東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合の取材のために訪れたブルネイ。人口40万人ほど、三重県ほどの面積しかない小さな国だったが、穏やかに暮らす人たちに触れ、いっぺんに好きになった。
ただ、酒好きには厄介なことに、宗教(イスラム教)的な理由から酒の販売や公然の場での飲酒は厳格に禁止されている…と思っていた。その中華料理店に入るまでは。
漢字の看板が掲げられた店に入ると、普段駐在している北京の店のようなにぎわい。銀色のポットに入れられ、カムフラージュされていたが、コップに注がれた色を見れば明らか。にぎわいの源泉はビールだった。注文が入ると、店員がカウンターで隠れるようにしてポットに缶ビールを注いでいた。
ビールだけでなく、ワインやウイスキーまで楽しんでいる客までいる。常連だという華人系の女性は「違法だけど、こっそり飲んでいるのよ」と耳打ちした。華人系の男性店長も悪びれる風もない。
中国には、「上に政策あれば、下に対策あり」という言葉がある。そのしたたかさが、南国にもしっかりと根付いているようで、何だか複雑な気持ちになった。 (佐藤大)