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サンパウロ 異国に残る沖縄文化

2013年08月09日

 「沖縄そば」と書かれた派手なのれんの奥から「食べていきませんか」と誘いの声がかかる。何もブラジル・サンパウロまで来て沖縄そばを食べなくても、と思ったが、ふと考え直してのれんをくぐった。

 「お茶、飲みますか」と日本茶まで出てきて、うれしくなった。150万人といわれるブラジル日系人社会の中で、沖縄出身者やその子孫は最大のグループだ。この店のある東洋人街には、沖縄県人会の事務所もあり、支部は全国に多数ある。

 日系社会には、コロニア語と呼ばれる言葉があった。日本語、ポルトガル語の混じった移民の言葉だ。沖縄出身者はウチナーグチ(沖縄言葉)とポルトガル語しか話せないケースもあり、独特のコロニア語を発展させた。

 「日本語だと言われても、まったく聞き取れないし、こっちの言ってることも通じないことがよくあった」。東洋人街で働く日本人男性は20年前をそう振り返る。「一方で、日本で使われなくなった琉球言葉が今でもサンパウロに残っている」という。

 100年の歴史を経て、ブラジルの沖縄文化は既にこの国独自のものになっている。そう考えれば、サンパウロの沖縄そばこそ、強烈な異文化体験-。と、理屈をつけてすすってみた沖縄そばは温かく、真っすぐにおいしかった。 (吉枝道生)