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ソウル 人肌ほどのアツアツ

2013年10月01日

 韓国のカップルはアツアツぶりが目立つ。手をつなぎ肩を抱き、さらにドギマギするほどのこともある。少し前、ソウルの地下鉄で「仲を良くするのもほどほどに」との広報ビデオが流れていた。

 最近、ハラハラするアツアツではなく、ほっこりしたアツアツに出会った。マンドゥクク(朝鮮半島式のギョーザスープ)を食べていた時、隣の70代とおぼしき男性が携帯電話を取り出し、大声で話し始めた。

 「お前か。おれだ。今、市庁近くでマンドゥククを食べている。うん、うまい。だからお前にチンマンドゥ(蒸したギョーザ)を包んでもらう。昼ご飯を食べずに待っていろ。うん、すぐ帰る」

 命令調の電話を切ると男性は丁寧な口調でチンマンドゥを2人分注文。手にぶら下げ、つえを頼りに速足で店を後にした。

 時刻は午後2時近く。奥さんは昼食を済ませていただろう。急いでもマンドゥは冷めてしまうだろう。でも奥さんは、夫が大威張りで持ち帰った人肌ほどのマンドゥをおいしいと食べただろう。そんなお熱い姿を想像させる電話だった。

 ソウルでは手をつないだ年配夫婦によく出会う。こんなふうに年を重ねられるなら、今はベタベタが過ぎても良しとするか。若者のアツアツぶりを少し大目に見られるようになった。 (篠ケ瀬祐司)