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ブラチスラバ 首都結ぶバスで通話

2013年12月05日

 ぽっかり予定が空いた出張の最終日。オーストリアのウィーンから路線バスで隣国スロバキアのブラチスラバに向かった。距離は直線で60キロしかない。バスはウィーン国際空港を経由し、2つの首都を90分で結ぶ。

 ウィーンのターミナルで乗ったのは10人ほど。高速道路を走り20分で空港に到着。大量の荷物と待ち構えていた客がなだれ込み、車内は満席になった。静かだった車内にスロバキア語が飛び交う。

 ウィーンの空港はスロバキア在住者の利用も多いようだ。隣に座った若いスロバキアの女の子が「ブラチスラバの空港よりウィーンの方が便数が多くてずっと便利」と笑顔で教えてくれた。

 バスは一般道に降りて田園を走る。国境近くのバス停でさらに10人ほど乗り込む。狭い通路で立ち乗りだ。首都同士を結ぶ「国際路線」だが、「ちょっと買い物へ」といった風情が漂う。

 隣の彼女はスマートフォンを取り出し、最初はスロバキア語でおそらく母親と、次に英語で誰かと話していた。自然と声が耳に入る。「私がどれほどショックを受け、悲しかったか。それを伝えたかった・・・」。相手は恋人だろうか。

 バスは国境検問所の跡地を止まらず走り抜け、ドナウ川を渡ると、ブラチスラバの街に入った。

 (宮本隆彦)