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ヘンプステッド 不毛の地に熱い血潮

2013年12月27日

 米国のサッカーチーム「ニューヨーク・コスモス」の本拠地は、とある村の大学の競技場だ。決して豪華なスタジアムではないけれど、詰め掛けたファンの声援は熱い。

 ニューヨーク州にある大きな島ロングアイランドのヘンプステッド村。冷たい金属のいすに座って周りを見渡すと、空席が目立つ。大学生の試合の方が人は集まるかもしれない。それでも「観客は5000人」と放送されると、「おーっ」と歓声が湧き、旗が振られた。

 ニューヨーク・コスモスといえば、かつてはブラジルの「王様」ペレ選手などが所属した名門だった。が、米国がサッカー不毛の地と呼ばれた時代。リーグは消滅してチームも解散。長い月日が流れた。そのコスモスが28年ぶりに復活し、メジャーリーグ・サッカーではないリーグで、地道な戦いを始めている。

 小さな競技場は、チームとファンの一体感に包まれている。米国らしい巨大スタジアムや派手な演出とはまったく無縁だが、居心地のいい雰囲気に酔い、周りのファンと一緒に盛り上がった。

 試合が白熱してくると観客席も当然ボルテージを上げる。だが、さすがサッカーファン、と苦笑した。ヒスパニック系が多いからだろう。気付けば興奮した周囲の声援はスペイン語ばかりになっていた。 (吉枝道生)