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旅順 歴史たどる街閑古鳥

2014年01月07日

 日露戦争で激戦が繰り広げられた203高地、旧日本軍のスパイとして処刑されたとされる川島芳子が結婚式を挙げたホテル…。初めて訪れた中国遼寧省の大連市旅順口区は、歴史好きにはたまらない魅力に満ちていた。

 軍港である旅順港が外国人に開放されるようになったのは比較的新しい。1996年に203高地など一部が開放され、2009年には軍事施設周辺を除き全面開放された。司馬遼太郎氏の小説「坂の上の雲」ブームもあって、多くの日本人観光客が訪れた。

 しかし、10年に尖閣諸島沖で起きた漁船衝突事件をきっかけに日本人観光客は激減。昨年の尖閣国有化の余波が追い打ちをかけた。日本人観光客向けの男性ガイドは、ピーク時は1万元(約16万円)以上の月収が、最近は1500元(約2万4000円)にまで落ち込んでいるといい、「他の仕事をやりながらでなければ食べていけない」と頭を抱える。

 地元中学の元日本語教師で、流ちょうな日本語で旅順の激戦を解説する名物ガイド・韓行恕(かんぎょうじょ)さん(88)も、このところ出番がめっきり減っている。「このような歴史を繰り返さないようにするために、日中友好に尽くさなければ、と思っているんですが」。「歴史的資源」を活用しきれていない現状が何とも歯がゆい。 (佐藤大)