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バンコク 経済援助で猫メタボ

2014年01月30日

 バンコクの中心地アソークで地下鉄を降り、エスカレーターで地上に出ると、太った、黄色い猫が出迎えてくれる。そばには、餌と水入れ。日本じゃ、太った猫は珍しくないが、やせた猫ばかりのバンコクでは、横綱級だ。

 3年ほど前、エレベーターのそばにたむろしているうちに、朝と夕、決まった人が餌と水をやるようになった。「アソークの猫」としてフェイスブックで5月中旬に紹介され、人気に火が付いた。

 人懐っこく、道行く人が餌をやると、甘えたそぶりでムシャムシャ。時には体をよじるサービスも。どんどん体重が増えてきた。

 別の日に訪れると、いつもの場所にいない。太った男性が繰り返し呼ぶ。「きょう、近くの市場で他の猫とけんかしてけがをしたんだ。いつも見ている駅の警備員が教えてくれたんだ」。そう話すのは英語教員バ・ウォンリッチさん(39)。「苦労もせずに餌を食べてるから他の猫が嫉妬したのかな。俺はドラえもんに似ているから、あの太った猫が大好きさ」。市場に行くと、アソークの猫は脚を引きずって歩いていた。体は重そうだ。

 すぐそばには、国際協力機構(JICA)の入った高層ビルが見下ろすように立つ。関係者は皮肉まじりにこう言った。「この猫は、経済援助の失敗例ですな」 (伊東誠)