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パリ 異国で守る日本文化

2014年02月05日

 「若竹のごとく、すこやかに」。祝詞の中にはそんな文言があった。いろりが据え付けられた古民家。神棚の前で神主が厳かによみ上げた。2人の男児はそのふるまいを珍しそうに見つめている。

 11月11日、パリのアクリマタシオン庭園にある古民家で執り行われた「753」は、関係者によると、フランスの公共の場でおそらく初めての試みだそうだ。古民家は「メゾンドキソ」と呼ばれる。長野県木曽町にあった築約150年の年代物。民俗学者ジャーヌ・コビーさんらが働き掛けてフランスにやってきた。2010年に現在地に移築され、コビーさんらが毎月、日本文化を紹介する場として活用している。

 この日はパリ在住の神職奥谷公胤(まさつぐ)さんが招かれた。奥谷さんは異なる文化の中で生きる苦労を乗り越え、世界で活躍する人に育ってほしいという願いを祝詞に込めたという。

 参加したのは、フランス人の父、日本人の母を持ち、パリ近郊に住むマルジャン・レオ君(5つ)、ルイ君(3つ)の兄弟。母の奈々さんは「まさかパリで753ができるとは・・・。少しでも日本文化に触れて育ってほしいと思っているので感激です」と喜んだ。

 小さいが、異国で日本文化を守り、育てようと願う人たちの気持ちを強く感じる行事だ。 (野村悦芳)