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ビシケク 誘拐結婚は「伝統」?

2014年03月03日

 中央アジア・キルギスでの取材を終え、首都ビシケクの空港に向かうタクシーで、運転手(38)から「誘拐結婚」の話を聞いた。

 気に入った女性を男が街頭などから自宅に連れ帰って幽閉。抵抗する女性が結婚を受け入れるよう、男の親族らが総出で説得するという。ソ連崩壊後に法律で禁じられたが、現在でも散発し、ほとんどの例で警察は黙認状態だというから衝撃的だった。

 運転手の妹も今夏に誘拐され、結婚したという。「あなたも両親も、それでいいの」と質問すると、「この国の『伝統』だし、嫌がっていた妹も受け入れたから」と運転手。妹の夫は誘拐後、すぐに運転手らに連絡。貴重品である羊や馬を「結納」代わりに届け、最近の相場に合わせて約100万円の現金も贈ってきたという。

 旧ソ連構成国の最貧国といわれるキルギス。「伝統」の背景は貧困だろうかと、解せない気持ちのままモスクワに帰った。飲食店でキルギス人の女性店員を見かけると、見聞きしたことを話してみることにしている。多くは「確かに『伝統』だが、いいはずがない」との反応を見せる。

 キルギスの既婚女性の4割が誘拐結婚との指摘もある。幽閉された女性のレイプが相次いでいるとの西側メディアの記事を見つけた時、気持ちが重くなった。(原誠司)