2014年03月05日
子供たちの元気な声が響く校舎の壁のあちこちに、えぐられたような穴が残っていた。爆撃の跡だという。
イスラエルの大規模な空爆で昨年11月、約170人が犠牲となったパレスチナ自治区ガザ。1年ぶりに訪れた現地には随所に、傷痕が残っていた。学校は精神的に不安定になった生徒もいる。多くの親族を失ったナセル君(17)は「平和を願うだけです」とつぶやいた。
教師の1人が、授業で使っているビデオを示した。日本の戦後復興を特集したテレビ番組を、インターネットで見つけたという。「日本人は、われわれの立場をよく知っている。『尊敬している』と日本にメッセージを伝えてほしい」。戦後の焼け野原から、経済大国に発展した日本に、自分たちの境遇と願望を重ねていた。
校外では、子供たちの精神ケアに取り組んでいる女性オラさん(26)とも会った。接している男児(10)は、叔父が砲撃で死亡するのを目撃。今も悪夢にうなされる。「心に傷を負ったままの子はまだ多い」。10代でも、夜尿症に悩んでいる例があるという。
中東は、情勢の変化がめまぐるしい。惨劇もあっという間に、国際社会から忘れ去られていく。終わりの見えない占領と混迷にあえぐガザの人々が、平和を実感できるのはいつだろうか。 (今村実)