2014年03月11日
政治家などの取材はしばしば、「ぶら下がり」と呼ばれる方法で行われる。記者会見のような形ではなく、ホテルのロビーなど公共の場で取材相手を取り囲んで取材することを指し、「囲み取材」とも呼ばれる。
先日、閣僚経験のある政治家が訪中し、北京駐在の各社に「ぶら下がり」の案内が来た。突然の連絡だったが、中国の外交政策を取り仕切る高官と会談したとのことで日中関係改善に向けてニュースがあるかもしれないと思い、指定されたホテルに向かった。
ところがホテル到着直前、先方から取材への対応を中止するとの連絡があった。理由を聞くと、中国側から会見内容はもとより、会見相手すら誰かも明らかにしてほしくないとの意向が示され、それに従ったという。
外交交渉の過程を公表できないという原則論は理解できる。ただ今回は記者側ではなく政治家側の要望でセッティングされたもの。しかも一国を代表する政治家が、自らの意思ではなく相手の意向で中止するのはあまりにも情けないのではないか。中国側の要請は干渉的でもあり、突っぱねて政治家として自負を示してほしかった。
後でこの政治家は「会談は有意義だった」と述べたというが、会見相手すら公にできない状況こそ、今の日中関係を物語っている。 (新貝憲弘)