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バンコク 過剰な報道に戸惑い

2014年04月02日

 反政府デモが小康状態になった昨年12月中旬、女児を殺した疑いで逮捕された男が「10人に暴行し、5人を殺害した」と供述し、「連続少女殺人事件」として、大きく報じられた。報道は過熱し、ここまでやるか、とフィーバーぶりに驚いた。

 男は12月6日夜に飲酒後、スクンビット地区で「菓子を買ってあげる」と言って、車に1人でいた少女を空き地へ連れていった際、抵抗され、絞殺したとされる。

 タイでは容疑者も会見に出る。そこで「酒を飲むと理性を失ってしまう」と話したことがマスコミの怒りに火を付けた。犯行直前、容疑者が少女と手をつないで連れ回す映像がこれでもかとテレビで流れ、胸が締め付けられる。信頼性が高い新聞やテレビですら内容はあまりに詳しく生々しい。

 生まれた時には親に捨てられ、養父母と15歳で死別、極貧の連続だったという男の生い立ちや、その名前、手口は日本犯罪史を代表する事件を想起させる。そして、このニュースから次のニュースに移る瞬間、女性司会者がとびっきりの笑顔に。そのギャップに「ここはほほ笑みの国」と実感する。 (伊東誠)