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北京 魔よけならぬ疫病神

2014年05月08日

 中国の春節(旧正月)に欠かせないのが爆竹と花火だ。大気汚染の悪化を心配する市民は爆竹を自粛するようになっているが、2000年前からの伝統文化は容易には変えられない。

 北京の自宅アパート周辺は高層ビルが多い。春節前に「このビルは断熱材使用。六十メートル以内の爆竹禁止」と書かれたプレートがあちこちの壁に貼られた。マンホールのふたには「爆竹禁止」のシールがべたべた。

 大みそかの夜になり、爆竹と花火の打ち上げ音が散発的に響き始める。日本だと紅白歌合戦にあたる中国中央テレビ恒例の「春節聯歓晩会」は音量を上げても聞き取りにくくなる。

 午後10時すぎ。バリバリ、ゴーゴーと土砂降りに雷鳴のような音。窓を閉め切っても大音響から逃れるすべはない。窓の外をのぞくと、「爆竹禁止」の場所に大勢の家族連れの姿。爆竹と花火に興じている。ごう音は午前1時まで途絶えず、中国の有名歌手が出演したテレビを見るのはあきらめた。

 白い煙で覆われた北京の空。爆竹の由来は魔よけのはずだが、大気汚染という「疫病神」を追い払うのは難しい。 (白石徹)