2014年05月18日
もはや中東で多少のことには驚かない。だが、それでも今回は耳を疑った。
というのも、事実上のクーデター後、エジプト暫定政権を主導する軍が突然、「C型肝炎やエイズを治す機器を、独自に開発した」と大真面目で発表したのだ。
「ウイルスを破壊し、実験では患者の9割が治った」と主張する。地元メディアによると、開発班の責任者は「わが国でC型肝炎は消えるだろう」と豪語した。
肝炎に苦しむ患者が多いとされるエジプトで、反響はすさまじい。カイロで病院の様子を聞いてみると案の定、問い合わせが殺到していた。だが、医師は「発表に科学的根拠はうかがえず、医師の間では冗談とみられている」と声を潜めて話した。
にもかかわらず、メディアは「成果」をちょうちん記事で大々的に伝える。疑問を示した政府関係者は「辞任せよ」と袋だたきに遭った。
夢物語のような機器を宣伝した軍の思惑は、分からない。確かなのは、相手が軍ならば、どんな話でも否定しにくい重い空気が漂っていることだ。
(今村実)