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ソウル 反日の日触れた親切

2014年05月21日

 ソウルに着任した3月1日は、韓国では日本による植民地支配に民族が抵抗した「三・一独立運動」の記念日。渡韓前には知人から「反日感情が最も高まる日だから、気を付けて」と心配されていた。

 オフィスの近くで催された記念式典で、朴槿恵(パククネ)大統領は最近の日本政府の動きに反発する姿勢を鮮明にした。会場が面する大通りには警察官があふれ、記念行事でたたく太鼓の音が響いていた。

 そんな場所で道に迷った。滞在する予定のホテルを探したが、見つからない。困っていると、後ろから英語で「手助けしましょうか?」と声を掛けられた。振り向くと、若い韓国人女性2人の笑顔。スマートフォンで検索し、小さな看板が掛かったホテルを見つけてくれた。

 発音が悪い韓国語や手にしていた地図から、私が日本人であることは容易に分かったはず。しかし、手を差し伸べてくれた態度に「反日」はみじんも感じられなかった。

 ホテルで見たテレビは、日本大使館前の激しいデモを映していた。それでも、とことん悲観的にならなかったのは、あの2人の笑顔のおかげだろう。 (島崎諭生)