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独・レーゲンスブルク ドナウ川と奏でる味

2014年05月26日

 ドイツ最古の焼きソーセージ店として有名な、南部レーゲンスブルクの店を訪ねた。ドナウ川に架かるドイツ最古の石橋のたもとにあり、その名も「歴史的ソーセージの台所」。少なくとも1378年から同じ場所で商売してきたことが公文書で分かっている。

 調理場では、何十本もの小ぶりのソーセージを炭火でジュウジュウ焼いている。10本で13.5ユーロ(約1890円)と少々高いが、パンに挟んでがつがつ食べ、街歩きですいた腹を満たした。

 店の外壁に「水位 2013年6月」と彫ったプレートがある。昨年、ドイツやチェコなど中欧を見舞った洪水の記録だ。大人の胸の辺りまである。

 50年にわたり店を切り盛りした先代の女主人マイヤーさんに聞くと、備品は避難させたが、店の修理や数週間の休業で大損害だったという。外壁には120年前の洪水の記録も。「洪水はしょっちゅうあるし、本当に大問題」と嘆く。

 もっと高い場所に移ればいいのでは。そう問うと、女主人は「ドナウ川と石橋と私たちの店はアンサンブルを奏でているのよ」と笑った。 (宮本隆彦)