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北京 命を懸けた座り込み

2014年06月01日

 中国で人権問題を取材していると不合理な話はいくらでもあるが、今回ばかりは絶句した。昨年夏に取材した人権活動家の曹順利さんが急死したからだ。彼女は当時、中国政府が国連に提出する人権報告書に自分たちの意見を反映してほしいと訴えるため、中国外務省前で座り込み運動をしていた。夏の暑い時季にもかかわらず、仲間たちと昼夜交代で座り込んでいた彼女は見るからに元気だった。

 「私たちの人権状況が少しでも報告書に盛り込まれれば」と穏やかな口調ながらきっぱり語っていた。しかしこの座り込みが社会を騒がせたとして警察当局に拘束され、肺結核などにかかって危篤状態で病院に移された時は手遅れだったという。

 わずか半年余りでなぜここまで健康状態が急変したのか。中国外務省の定例会見で質問すると報道官は「誠実な治療を受けており、彼女の権利は保障された」と主張。欧米諸国が指摘する人権侵害の疑いには「人権問題に名を借りた内政干渉」と批判までした。

 座り込みするだけで人の命が左右されるという現実。それを直視しない限り、中国の人権は改善されない。(新貝憲弘)