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バンコク 命が縮む? 8番バス

2014年06月11日

 路線バスはバンコク市民に欠かせない。運転の荒さで有名なのが民間委託の「8番系統」。接触事故で相手のバイク運転手が死亡しても、2000バーツ(6400円)の罰金で10日後にはハンドルを握っていたという話も。ならば、体験してみよう。

 中心部から終点まで1時間ほど乗った。日本じゃお目にかかれないおんぼろバスの窓は開けっ放し。停留所で客の置き去りは当たり前、渋滞を抜けたとたん飛ばす、飛ばす。3年前、8番バスがもう1台のバスと意地の張り合いでレースを演じ、接触事故。1人が亡くなった。

 「急ブレーキで転びそうになったこと? 数え切れないわ」と銀行員ラッチャーさん(45)。女子大生スパッタラーさん(23)は「運転手が並走しているバスの運転手と怒鳴り合いのけんかをしていた。驚いた」。

 「乗せた客の分だけ給料が増える。稼ぐためには、なるべく飛ばして長い距離走らないと。同じ8番が停留所の直前で減速していたら、割り込んでも客をすくうのは当然さ」と運転手ラープさん(57)。「事故がなければ、俺の運転は100点満点」と言う言葉は、あながち冗談でないように聞こえた。 (伊東誠)