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ニューヨーク 跡を濁さぬ引っ越し

2014年06月14日

 向かいの家に住んでいた1人暮らしの中年男性が引っ越した。長く住んでいただけあって、家の前の通りには数十袋のごみ、テーブルや椅子などの家財道具が山のように捨てられた。

 米ニューヨーク郊外のこの辺りも日本と同じように普通ごみ、資源ごみの日が決められている。この日はそのいずれでもなかった。しばらく様子を見ていたら、多数の人がごみを見に来た。

 まず、ピックアップトラックが到着した。野球帽をかぶった男性が降りてくると、電化製品らしきものを手に取り、ポイと後部の荷台に放り込んで走り去った。

 中古品の山の前に来ると、のろのろ運転する車も続出。どうやら、車内から値踏みしているらしい。

 夜になったら、電灯代わりに携帯電話をかざし、良いものはないかと探す人も。翌朝には、大部分が見事に消えていた。

 職業としている人もいたかもしれないが、中古品を持ち去ったのは、ホームレスではなく、多くが普通の市民たち。隣の家の庭にも、ごみの中にあった椅子3脚がちゃっかり置いてあった。 (長田弘己)