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バンコク 汗と涙の? 入院生活

2014年07月04日

 屋台で商品に手を伸ばそうとしたら肩に激痛が走った。汗が噴き出したのはバンコクの暑さのためだけではない。検査の結果、右肩の靱帯(じんたい)が切れていた。「日本語通訳がいるから」と初めて海外での手術を決めた。

 とはいえ入院中、通訳がずっとそばにいるわけではない。術後のデリケートな体のことで何か尋ねられると、必要以上に緊張してしまう。

 肩を常に冷やさないといけない。「氷が溶けたから交換して」とコールしても発音が悪いのか、来ない。焦って何度もナースステーションへ走った。

 ある朝、目が覚めると布団がびしょぬれに。「緊張の連続とはいえ40過ぎておねしょかよ!」。実はアイシングの袋の口から水があふれていた。看護師に「布団がぬれた」と言うと、皆笑っている。ユーモアで返せる余裕はない。

 極めつきは小用のとき。点滴でベッドから動けない。看護師を呼ぶとベッド備え付けの机に尿瓶を置いた。「食べ物を置く机だ。そこに載せるのか」

 通訳に尋ねると「普通そんなことはしません。あなたがひどく焦っていたから、そばに置きたかったのでは」。(伊東誠)