2014年08月11日
「じっとしてはいられない」
韓国の統一地方選の期間中、ソウルではフェリー「セウォル号」沈没事故への政府対応を批判する集会が何度も開かれた。中心になったのは犠牲になった高校生たちと同世代の子どもを持つ母親たち。彼女らが叫んでいたのが、この言葉だった。
事故では、沈没前に流れた「じっとしていてください」という船内放送に従って、多くの乗客が犠牲になった。集会では、この放送を皮肉った「じっとしてはいられない」という言葉がスローガンになった。
「青瓦台に行こう」と叫び、警官隊とのもみあいも辞さない彼女らの姿に、子どもたちへの放射能の影響を心配して反原発デモに集まった日本の母親たちの姿を思い起こした。
選挙では「アングリー・マム(怒る母親)」と呼ばれた彼女たちのパワーに注目が集まった。結果は、与党セヌリ党を大敗させるまでには至らなかったが、主要17首長選の過半数を野党が奪い、与党幹部は「民心の怖さをあらためて痛感した」と漏らした。彼女たちの安全社会実現への思いは、同じ女性の朴槿恵(パククネ)大統領にも、きっと届いたに違いない。 (島崎諭生)