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パリ 舌鼓打つのもお仕事 

2014年07月30日

 ニュース番組の画面下に速報が流れた。「オランド大統領 農業見本市に到着」

 会場で重要な会談があるのか農業絡みのスキャンダルでもあったか。そんな疑問とともに画面を見つめたが、続報はない。しばらくして、楽しそうに試食する大統領の笑顔が映った。

 知り合いの主婦が教えてくれた。「見本市はフランス人の誇り。今年の農作物を大統領が味見する重要な行事です」。オランド氏は昨年10時間、一昨年は12時間も会場にいた。シラク元大統領も会場に入り浸って農業者と語り合い、好感度を上げたという。サルコジ前大統領の後々まで語り継がれる失言の舞台になったのもこの農業市だ。

 行ってみると熱気がすごい。広大な会場に個性豊かなチーズやワイン、ハムなどが並ぶのは壮観だ。家族連れが試食、試飲を楽しんでいる。今年の一頭に選ばれた雌牛「ベラ」の周囲に人だかりができていた。りりしい表情をカメラに収めようと皆必死だ。欧州屈指の農業国に自分がいるのが実感できるし、政治家をひきつける晴れ舞台であるのもよく分かる。ニュースによると今年もオランド氏は半日いたそうだ。 (野村悦芳)