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バンコク 運河船旅 悪臭は我慢

2014年09月02日

 船着き場では酸っぱい臭いが鼻を突く。バンコクの市街地を東西に貫くセンセープ運河。長さ30メートルの乗り合いボートが大きな波を立ててやって来た。

 そこで目を見張るのは、幅20センチの船べりをするすると歩きながら料金を徴収したり、船着き場へ着くやロープを渡して船を固定したりする乗務員だ。

 屋根の少し下にあるロープを命綱として脇にはさみ、揺れる船の上で体のバランスを取る。直角に近い角度で曲がる時、客はちょっとしたスリルを味わうが、黒いしぶきが乗務員のジーンズにかかることも。分厚い手袋、マスク、ウインドブレーカーは日焼け止めとはいえ、炎天下ではかなり暑そうだ。

 15分乗って12バーツ(約40円)払った。70ほどの席は満席。主に地元の人で旅行客はあまりいない。中国から旅行に来た女性(29)は「窓代わりのシートで水しぶきを防いだりして楽しかったけど、臭いと黒く濁っている水がね・・・」。ごみなどいろいろな物が浮かんでいる。

 乗務員のアピシャット・セイヤンさん(29)は「怖くない。プロの仕事として誇りを持っているよ」。そんなすがすがしい顔がまぶしかった。 (伊東誠)