2014年08月30日

　危険のなさそうな顔をしているのか、ニューヨークの街を歩いていると、よく道を聞かれる。観光施設に行きたい、地下鉄の駅はどこか。方向を示せば済むことが多い。だが、その女性の質問は難しかった。「安くておいしいパスタが食べられる店はないかしら」。「それなら」とすぐ近くにある店を教えると、「もっと安い店がいいんだけど」と即座に拒否された。

　「じゃあ、あの店は？」と手軽にピザなどを食べられる店を教えると「そういうジャンクな食べ物ではなくて、私の行きたいのは…」と料理への注文が続いた。なかなか難しい。近くにある別の店を紹介し、「気に入らなかったらあきらめて」と別れた。彼女がその店に入ったかどうかは分からない。

　でも、なるほどこれは名案だと気づいた。ニューヨークの食事は恐ろしく高い。ファストフード以外で安い食堂を探すには、近くで働いているサラリーマンらしき人に聞くのが手っ取り早い。さらに、アジア系なら激安のうまい店を知っている－と考えたのかもしれない。彼女、教えられた店で失望して、考えを変えたかもしれないけれど。　（吉枝道生）