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モスクワ 多民族国家に潜む影

2014年09月07日

 ロシアは少数民族も合わせて194の多民族国家とされ、モスクワの街にはあらゆる色の髪の人々が往来する。外国人とロシア人の区別ができないこともあってか、普段は外国人を意識することもないようだ。

 そんなモスクワでも、中央アジアの人に対する差別的な扱いが気になることがある。ロシア紙でこんな記事を読んだ。モスクワで1年間の出稼ぎを終えて帰国しようとしたキルギス出身の22歳の若者が、旅券の写真と顔が違うとの理由で3年間拘束されていたという。

 同紙には、問題となった旅券の顔写真と現在の顔写真が並べて掲載されているが、どう見ても同じ人物としか思えない。若者は結局、今年7月の裁判で冤罪(えんざい)が確定したのだが、拘束中は両親にも会えず、婚約は解消されてしまったという。

 中央アジアの人たちの多くは貧困層に属し、犯罪に走る例もある。知人のロシア人は「差別しているのではない。怖くて近づきたくないだけ」と話す。シベリア抑留や北方領土などの問題のため、ロシアに好印象を持たない日本人も多いが、実はとても親日的な国柄だけに、残念に思っている。(原誠司)