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北京 この接客 文化遺産?

2014年09月12日

 高層ビルが並ぶ2100万人の大都会・北京の一角に、まるで30年前の中国にタイムスリップしたようなスペースがある。

 大きな街には必ずあった国営の友誼(ゆうぎ)商店だ。外国人向けに土産や漢方薬、古美術品などを販売。観光客には便利な場所だったが、北京以外の友誼商店は再開発で大型百貨店などに装いを変えてしまった。

 奇跡的に残された4階建ての空間。久しぶりに足を踏み入れ、30年前と変わらない店員の接客態度にホッとした。各階の売り場はサッカー場ほど広いが、客の姿はほとんどない。店員は手持ちぶさたの様子。

 イヤホンをしてタブレット端末をのぞいたり、読書をする店員。おしゃべりや化粧に余念がない女性店員。こちらから呼び掛けなければ、客の姿は目に入らない。サービス業とはいえない態度だが、不快ではなく、むしろ懐かしさがこみ上げる。

 中国社会は、日本の昭和初期から現在までの時空を、わずか30年で飛び越えたように映る。カネや権力が全ての激変する時代に追いつけない中高年者たち。友誼商店をそのまま「博物館」にして残すだけの価値もあるのでは・・・。 (白石徹)