2014年10月04日
屋台も店じまいを始める午後11時ごろ。ほろ酔い気分で自宅に戻る途中、暗がりで西洋人の4人家族に道を聞かれた。
「タイバーツがなくなってしまった。米ドルはいっぱいある。交換所はどう行けばいい?」
「夜遅くまで開いている交換所は知らないよ」と答えるなり「おまえは日本人か? 私たちは日本が大好きだ」「日本円を持っているか? 俺はこんなにドル紙幣を持っている」と分厚い財布の中身を見せ、畳み掛けるように話し掛けてくる。足元には坊やがまとわり付いてくる。
はたと気付き酔いがさめた。「これが日本円見せろ詐欺か。まさか自分が遭遇するとは」
「日本が好きだ」「自分も金持ちだ」と油断させ、日本の札を見せろと言う。財布を見せた途端、周りに人が寄ってきて、こっそり札を抜き取る手口だ。
「タイに住んでいて、日本円は1枚も持っていないよ」と告げ、その場から離れた。追い掛けられなかったが、背後で「ちっ」と舌打ちする音がした。
それにしても、幼い子を深夜まで連れ回し、詐欺に加担させるとは。そんな親に育てられては、たまったものじゃない。(伊東誠)