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ベルリン 忍び寄る差別の空気

2014年10月03日

 ベルリンの街角で最近、パレスチナの旗をよく見る。地下鉄に掲げて乗り込んで来たり、マントのように羽織ってバイクに乗っていたり。彼らはドイツに暮らすパレスチナ人の若者。イスラエルがパレスチナ自治区ガザで展開する軍事作戦に抗議するデモの行き帰りなのだ。

 デモ参加者の大半は穏健なのだが、攻撃で市民が犠牲になる中、一部が過激化。「ユダヤ人にガスを」とナチス・ドイツのホロコースト(ユダヤ人の大量虐殺)を連想させる言葉を街頭で連呼する事態も起きている。

 ナチスの過去を克服したかに見えるドイツでよみがえった反ユダヤ主義に、ユダヤ人社会の衝撃は大きい。ドイツ・ユダヤ人中央評議会のグラウマン会長は独紙の記事で、パレスチナ人の敵意よりも「一般のドイツ人の間でユダヤ人と連帯しようとの動き」が起きていない点を不安視し「私たちへの脅しは、自由で寛容な社会や、あなた自身への攻撃を意味すると分かってほしい」と訴えていた。

 人種や国籍で差別するヘイトスピーチ(憎悪表現)が問題になっている日本にも、そのまま当てはまる言葉だろう。(宮本隆彦)