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カイロ 電気なし生活の教え

2014年10月09日

 カイロでは、それは突然やってくる。1日に二、三度なので、驚くこともない。一度の停電は1時間~1時間半。復旧するのを待つしかない。冷蔵庫に置いてあった夕食用のおかずを電子レンジで温めようとしたまさに今、停電に襲われた。仕方ないので、ロウソクの火を頼りに冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

 以前取材したノーベル賞受賞者は、人類最大の発見の1つに電気を挙げた。確かに、電気がなければ日常生活を送るのさえ難しい。今日の夕食もとっくに腐って、食べられなくなっていたに違いない。だが、ロウソクの火を見詰めると、「昔の人はこの暗い明かりの中で夜を送っていたのか」と、妙に感慨深い気持ちもわいてくる。

 屋外の気温は30度を超えているのだろう。エアコンが切れ、暑くなってきた。昔の人々は、こんな暑い中で暮らしていたのだ。何だか自分が軟弱な気もしてくる。

 そんなことを考えていたら、電気が復旧した。いろいろな思いが頭をめぐることを考えれば、停電もそれほど悪くない。が、数カ月に一度くらいで十分だ。明日、ロウソクを買いに行く。 (中村禎一郎)