2014年10月22日

　夏の終わり、日中は暑さを感じるロンドンに赴任し、買い物に出掛けた商業施設で「Ｋｉｍｏｎｏ」の文字が目に飛び込んできた。女性服の店のウインドーに大きな垂れ幕で「今なら２０ポンドオフ」。売り場の一角には、黒地や紺地に、花柄や幾何学模様の入った化繊のカーディガンが並んでいた。

　襟もボタンもなく、袖口の広いぺらぺらの羽織りものを、こちらでは「キモノ」と呼ぶようだ。ニューヨークが舞台の米国ドラマでは数年前、すでに先端ファッションとして登場していたが、英国ではこの夏、突然ブームが訪れた。「休日とか寝る前に家で着るんです。種類もいろいろあったけど、すっかり売れて在庫はこれだけ」と店員。英国全域に展開する別のブランドでは５秒に１着、１日平均１４００着も売れたという。

　「こんなの着物じゃない」と目くじらを立てず、日本文化がまた１つ、海外で知名度を得たことを喜ぼう。すっかり秋めいた翌週末、店の「キモノ」コーナーは縮小し、手に取る客は少なくなっていた。店員はあっさりと「来夏もキモノがあるか？　どうかなあ。流行は変わるから」。　（小嶋麻友美）