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エディンバラ もう元には戻れない

2014年10月31日

 スコットランドの独立住民投票が否決された翌日、古都エディンバラ近くのフォース鉄道橋のふもとに立った。

 河口に架かる全長2.5キロの橋は1890年の完成。「鋼鉄の怪物」の異名を取る威容が、圧倒するように迫ってくる。

 この巨大な橋を造った120年前の技術力に驚かされるが、現場監督が渡辺嘉一という日本人だったことを思うと余計に感慨深い。

 渡辺はグラスゴー大で土木技術を学んだ。当時の日本は明治半ば。最新技術を学びに多くの日本人がスコットランドに来た。全盛期の英国の国力をほうふつとさせる橋を見上げていると、当時のスコットランドの人には「独立」なぞ、頭の片隅にもなかっただろうと思う。

 取材で会った独立派の人たちは、一様に中央政府への不信を口にした。国力が落ち、連合王国という特異な国の形態がきしみ始めていると感じる。

 英メディアでは投票前、否決でも英国はもう元には戻れないという論調が目立った。否決後、スコットランドを優遇しすぎだという中央政権内の議論を見ていると、そうかもしれないと思えてくる。 (石川保典)