2014年11月20日
「私はね、インド出身なんですよ」。米カリフォルニア大サンタバーバラ校。陽光あふれる研究室で、ウメッシュ・ミシュラ教授が突然つぶやいた。青色発光ダイオード(LED)の発明でノーベル物理学賞の受賞が決まった3人の1人、中村修二教授について話を聞いていた。「シュウジは世界を変えた」。そう言って同僚の業績をたたえていたミシュラ教授は、急にインドの小さな村の話を始めた。
彼の母方の伯父が住む小さな村に電気が初めて通ったのは、1975年から80年ごろ。今でも電気は「やっと通っている」程度。そんな村の暮らしを支えているのがLEDだという。
「市場でね、野菜を並べて売っている頭上にLEDのランプが揺れてるんだ。他には、臭くて危険で値段が高くて、それでいてあまり明るくない灯油ランプしかない。インドでは、米国で出回るずっと前からLEDがあったんです」
LEDの開発が村の暮らしを変えた。そう強調するミシュラ教授は、うれしそうに笑って付け加えた。「近いうちに伯父にシュウジのことを話そうと思ってるんだ。びっくりすると思うよ」(吉枝道生)