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仁川 愛国心も時と場合で

2014年11月30日

 水の中では、まるで不自由がないかのようだった。

 仁川(インチョン)で開かれたアジアパラリンピック大会。水泳競技の選手たちは、手がなくても足だけを使うなど、それぞれの泳ぎ方で気持ちよさそうに水の中を進んでいた。先頭から大きく後れる選手がいると、観客席から励ましの拍手が湧き起こり、国籍に関係なく選手を後押しする。

 視覚障害者の柔道では、相手の体を1回転させる大きな投げ技を決めるたび、バドミントンでは片手や片足の選手たちが強烈なスマッシュを決めるたび、感嘆のどよめきが湧いた。

 そんな中で、残念に感じることがあった。各会場には時折、近くの小中学校から生徒たちが見学に来ていたが、韓国選手が出場する試合だけ、生徒たちが発する「テーハミングク(大韓民国)」の大合唱が会場を包んでいたことだ。

 韓国人の愛国心の強さについて、普段は「真っすぐな国民性」と好意的に受け止めているのだが、今回ばかりは似つかわしくないように思えた。

 6年後には、東京でパラリンピックが開かれる。日本の観客たちは、どんな応援風景を見せるだろうか。(島崎諭生)