2014年12月16日
ロンドンのパディントン駅でぽつんとしているところを一家に拾われ、都会で愉快な騒ぎを繰り広げる「くまのパディントン」。あの愛らしいキャラクターが、ペルーからの密航者だとは最近まで知らなかった。
物語の出だしの舞台となったパディントン駅には、銅像がある。ペルーから到着したクマが「このクマの世話をしてやってください」という荷札を首から下げ、小さなスーツケースの上に座っている。
生みの親の英作家マイケル・ボンド氏によると、出だしの着想は、自身が第二次大戦中に見た光景が影響しているそうだ。
ロンドンの西郊外の街で働いていたボンド氏は、ドイツ軍の激しい空爆を受けるロンドンから避難してきた子どもたちの姿を物語に重ね合わせたという。彼らは身の回りの品を詰めた小さなスーツケースを持ち、首に札をぶらさげていたと、英BBC放送に語っている。
そのロンドンに11月、著名人らがデザインしたパディントン像が50体、市内のあちこちにお目見えした。もちろん、戦争の記憶から生まれたとは思えない、おちゃめで礼儀正しいクマばかりである。 (石川保典)