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米ミルウォーキー 温かい朝食を求めて

2014年12月14日

 まだ薄暗い早朝、米ウィスコンシン州ミルウォーキーの街を走っていた。ふと見ると、ビル沿いに大勢の人が列をつくっている。貧しい人に食事を提供する炊き出しだ。黒人を中心とした男女が、寒風の中で身を縮こまらせて辛抱強く立っていた。

 厳しい寒さで知られる土地。彼らの吐く息は白い。ジョギングなんかしている東洋人をみなが無言で見つめ、やがて静かに目をそらした。

 この町では、黒人と白人の失業率の差が大きい。黒人の失業率が20・1%なのに対し、白人は5・6%だ。全米の黒人の失業率13・1%と比べても、この街の黒人が置かれた状況が分かる。中には、かばんを持って並んでいる人の姿もある。温かい朝食を取ってから、仕事に行くのだろうか。

 この町で4人の子供を持ち、休日もなく働く貧しい黒人女性の話を思い出した。彼女は、子供の誕生パーティーを一度もしたことがない。今年、一番下の娘が14歳になり、誕生日に友達を呼んで、皆でスケートに行きたいとねだった。水道代が払えなくなる。迷ったが、結局、彼女は首を横に振った−と聞いた。 (吉枝道生)