2014年12月18日
被災の爪痕が残るタクロバンの市街地からやや外れたコンクリートの建物。土俵ほどの広さで2羽の鶏が闘っていた。300人の観客が一喜一憂している。
フィリピンで有名な闘鶏だ。まず2人の飼い主が互いの鶏の顔を近づけたり離したりしてけんかさせる。すると「メロン」「ワラ」(あり、なしという意味だが赤コーナー、青コーナーのこと)の掛け声で会場は興奮に包まれる。仲介人が出てきてメロンに賭ける人がいると同額をワラに賭ける人を探す。
片方の足の後ろ向きの指のような距(けづめ)の所に刃物が取り付けられており、飛び掛かった瞬間、蹴りが入ると相手は地面にひれ伏す。だが、倒れてもなお起き上がり飛び掛かろうとする鶏の姿には、息をのむ。
飼い主は、強い鶏にするため餌に栄養剤を混ぜたりするが、みすぼらしい格好の人ばかり。勝負が今日の食費に影響するせいか、負けた鶏を抱える姿には絶望感が。
会場の外では、勝った鶏に傷口の縫合が丁寧に施されていた。負けた鶏を持っていた飼い主に聞くと「この悔しさは、こいつを酒のさかなにして晴らすしかないね」。 (伊東誠)