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ドイツ・アッセ 地の底から「幸運を」

2015年01月29日

 ドイツ北部ニーダーザクセン州アッセで地下750メートルの世界を体験した。古い岩塩坑の跡で、1967年から放射性廃棄物の最終処分法を研究するため原発のごみが運び込まれた。坑道から地下水が湧き出す想定外の事態が起き、現在はごみの撤去に向けて作業している。

 入坑前に下着を含めて専用服に着替え、ヘルメットを装着。緊急時の酸素マスクが入った箱を肩に掛ける。「気分が悪くなったらすぐ教えて」と案内役の女性に言われ、なんだか急に不安になる。

 鉱山バスケットと呼ばれるごついエレベーターで一気に地の底へ。岩塩を切り出した空間は結構広く、サッカーのコート半分ほどの広場もある。縦横に並んだ空間を通路がつなぎ、作業用のトラックやブルドーザーが走り回る。

 面白いのは、作業員らが交わすあいさつ。通常の「ハロー」ではなく「グリュック・アウフ(幸運を)」と言う。落盤など危険がいっぱいの地中で働く者の率直な願いがこもっていて、いい感じだった。そんな彼らにならってひと言。皆さんの新年に「グリュック・アウフ!」。 (宮本隆彦)