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ロンドン 移民の苦悩 昔も今も 

2015年02月06日

 ロンドンらしいお正月を、と元旦のウエストエンドへ。1970年代、マンチェスター近郊に住むパキスタン人の父親と英国人の母親、ハーフの子どもたちの一家を描いた演劇「イースト イズ イースト」を見た。映画化もされた人気作だ。

 移民の父親は規律正しいイスラム教徒。子にも伝統的なイスラムの生活を強いるが、生まれも育ちも英国の子どもたちは反発する。厳しく教えを守るパキスタン社会からの視線も冷たい。劇自体はコメディーだが、内外で疎外され、自我に悩む父親の姿が心に刺さった。

 戦後の発展期に労働者として大量に流入したアジア人たちは70年代、人種差別の空気にさらされ、攻撃を受けた。40年後。さらに多民族社会となった今の英国に、移民やイスラムへの嫌悪感がまた漂っている。

 題名はノーベル賞作家キプリングの詩の一節「東は東、西は西、二つが出会うことはない」から取ったという。

 5月の総選挙で争点の一つとなる移民政策。有権者だけでなく、異国で悩み生きるアウトサイダーの声にも耳を傾けて、英国の実像を見つめたい。 (小嶋麻友美)