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ソウル 取材拒否の特殊事情

2015年02月19日

 韓国でたばこが大幅に値上げされ、1本ずつバラ売りする店が数10年ぶりに復活していると聞き、ソウル市内の販売店を訪ね歩いた。バラ売りは違法のため、ほとんどの店は箱単位でしか売っていなかったが、中には「バラ売りもあるよ」と封を切ったたばこの箱と、ライターを差し出す所も数軒あった。

 「店が分からないようにするから、写真を撮らせてほしい」と依頼したが、すべて強く拒まれた。ある店の主人は「この国の権力は、北朝鮮と同じぐらい強いから。南北が対峙(たいじ)している、特殊な事情があるからね」と取り締まりを気にした。

 朴槿恵(パククネ)大統領の年頭会見でも、外国メディアが、北朝鮮寄りの発言をした韓国系米国人の国外退去などを挙げ、治安の厳しさについて質問した。朴大統領は北朝鮮式社会主義を目指したとされる最左派政党の解散を憲法裁判所が認めたことを例に「南北が対峙する特殊な事情では、国の安全を守るため最小限の法が必要だということを理解してほしい」と正当化した。

 南北分断から70年。納得しがたいが、今も「特殊な事情」が影を落とす韓国の現実を垣間見た気がした。(島崎諭生)