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独ハルバーシュタット ゆ~っくり1曲639年

2015年03月15日

 演奏に639年かかるオルガン曲をドイツ北部ハルバーシュタットで聴いた。米国の故ジョン・ケージ氏が作曲し「できる限りゆっくりと」と名付けた30分ほどの曲を、引き延ばし6世紀余りかけて演奏するプロジェクトだ。会場の教会跡では特注のパイプオルガンが楽譜の和音をひたすら「ワーーーーーン」と響かせている。

 演奏は2001年9月5日に始まった。冒頭の1年半余りは無音パートで、03年2月に最初の音が出た。これまでに13回、音が変わり、今の音は20年9月まで続く。演奏時間は、この教会にオルガンが設置された1361年から、このプロジェクトを企画した2000年までの長さに基づく。

 それにしても演奏が終わる西暦2640年が、どんな世界なのか見当もつかない。人類は生き延びているのだろうか。そう考えると、案内してくれた男性スタッフ(47)が漏らした「最後まで演奏されてほしい」との言葉も重みを増す。

 演奏はプロジェクトのウェブサイト(http://www.aslsp.org/de)で聴ける。演奏終了までの秒数も表示されている。 (宮本隆彦)