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チュニス 民主化道半ば光と影

2015年04月27日

 9カ月ぶりに訪れたチュニジアの首都チュニスのバルドー博物館。テロ事件による血だまりの痕が残り、犠牲者を弔うろうそくの火が揺れていた。「チュニジアのルーブル」と称される博物館をこんな形で再び訪れるとは思わなかった。

 民衆の力で独裁政権を倒した2011年の革命。国を代表する花ジャスミンを冠したこの革命は中東各地に波及。「アラブの春」の発端になった。昨年選挙で新政権も発足、アラブ民主化の手本とされてきた。

 一方で、革命後の混乱のため、経済は低迷。社会にひずみが生まれたのも事実。「自由に発言できる。それは素晴らしい。でも、大学を出たって仕事に就けない」。20代の男性はこう漏らした。

 失業と格差問題-。「民主化の優等生」ともてはやされる陰で、不満の火種が社会にくすぶり続ける現実。その隙間にテロ集団が巧みに入り込む余地があるのかもしれない。

 凶行の現場で、祈りをささげていた女子学生は言った。「暴力という手段では、決して私たちの社会は壊せない」。根付きつつある民主化のともしび。それだけは消えないでほしい。(渡辺泰之)