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カトマンズ 人騒がせな「地震予知」

2015年05月29日

 夕方、カトマンズから大地震の被害が大きい山間部へ行く途中、車中のネパール人助手と運転手の携帯電話が鳴り続けた。

 一段落すると「申し訳ない。取材は無理だ」と助手。理由を尋ねると「2時間後に大きな地震が来るとみんな言っている。そうなれば、戻る時、この道は崩れ、強盗が頻発するから」

 顔面蒼白(そうはく)の助手を落ち着かせ、「地震の研究が進んでいる日本ですら、2時間後といった精度の高い予知なんかできない」とこんこんと説明。次に、通過する地域で本当に強盗が頻発しているのか聞き込みを開始。ないことを確認して取材続行を決めた。当然、何のトラブルもなかった。

 翌朝、地元紙が種明かしをしていた。酔った外国人が「あと2時間で地震が来る」と言い触らした。警察に真偽を尋ねる電話が殺到して大騒ぎに。これが閣僚の知るところとなり、警察が威信をかけて、元凶の2人を追い、身柄を確保したとか。

 「こいつら、たっぷりむちでたたかれるのでしょう。ざまみろですよ」と助手。「むちって本当か」と聞きかけたが、その怒気を帯びた物言いに、のみ込んでしまった。 (伊東誠)