2015年06月25日
アジアでは屋外で取材を始めると、関係ない人までやってきて大勢に取り囲まれることがある。大地震の取材で訪れたカトマンズは驚きの連続だった。
両親を失った女の子を取材した時のこと。その集落へ行くと、30人の老若男女がその子を取り囲んで待っていた。遠回しに尋ねないといけないことが多い。周りに人がいては、話しづらい。助手に「私たちは怪しい者じゃないと説明し、少し離れるように言って」と指示しても、「無理です。みんな、この子を守りたいのです。それがネパール人です」。
ようやく、1階の1室に女の子と親戚の人、記者、通訳だけ入ることができた。落ち着いて質問できると安心したのもつかの間、あらゆる窓、ドアの隙間からのぞき込む顔、顔、顔…。女児より早くあちこちから答えが飛ぶ。静かになるまでかなりの時間を要し、疲れ果てた。
生後20日の子の母に取材した時も、テントに同居している女性たちが質問に答え始め、収拾がつかない。記者の困った顔に「何言ってるの? みんな助け合っているんだよ。取材も代わりに答えちゃ、いけないのかい?」。 (伊東誠)