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ソウル 活気を奪った感染症

2015年07月08日

 日ごろから帰宅後の手洗いとうがいを欠かさないが、最近はマスクをして通勤するようになった。韓国で中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの感染が広がっているためだ。

 地下鉄内で周囲を見回すと、マスク姿はせいぜい10人に1人程度。過敏と思われているかもしれないが、今春、何年ぶりかでインフルエンザにかかったことも影響している。

 薬を服用して1週間ほどで回復したが、1時は40度の高熱に浮かされ、体重も3キロ落ちた。当時、家族はちょうど、日本に一時帰国中。独りで寝込んだつらい記憶が今回、特効薬のないウイルスの感染拡大に対して「できる範囲の自衛策はしておこう」との気持ちにさせる。

 支局近くの焼き肉店の店員がこぼした。「団体の宴会予約が軒並み、中止になった。影響は大きいよ」。繁華街の明洞(ミョンドン)では中国人観光客らの姿がめっきり減ってしまい、ソウルの街は目に見えて活気を失った。

 韓国政府は「普段通りの生活」を呼び掛けるが、感染が完全に遮断されたとは思えない。外出する気になれず、休日、自宅で過ごす時間が増えた。(中村清)