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北京 自然体の懸け橋願う

2015年07月30日

 「私たちだって凡人ですよ」。中国の作家・魯迅のひ孫に当たる田中華蓮さん(22)と悠樹さん(22)の双子の姉妹を取材した時のこと。終始穏やかに話していた2人が、この時ばかりは少し語気を強めた。

 幼いころ「魯迅のひ孫なのに中国語もできないの」と言われ傷ついた話、中学まで日本で過ごし高校から北京に渡った話を聞き、私が「凡人には分からない苦労が」と思わず口にしたことに、即答が返ってきた。

 安易な言葉を発してしまったことを反省するとともに、2人にとって魯迅がいかに「重い」存在だったかを思い知った。

 そんな苦労を周囲から聞いていたので、2人は取材に応じてくれないのではないかと思っていた。快諾してくれたのは、華蓮さんが大学卒業を迎えるというタイミングもあったのだろうが、日中双方で生活する中で、魯迅のひ孫という「重み」から逃げないという覚悟が2人に芽生えつつあるからではと受け止めた。

 これからも日中関係はいろいろあるだろう。期待を掛けすぎてもいけないと思いつつ、2人が自然体で日中の「懸け橋」となることを願う。(佐藤大)