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ローマ 祝祭なのにテロ警戒

2015年09月18日

 広島・長崎、そして敗戦を真摯(しんし)に追憶する日本とは対照的に、イタリアの8月は快活な祝祭で彩られる。アゴストと呼ばれる8月はローマ皇帝アウグストゥスの名に由来するが、もともと8月は畑仕事を終え、古代の土地の神をたたえる月。労苦から解放された庶民と家畜が一体となって全土で祭りを挙行した。

 同じ皇帝をたたえ設けられたフェラゴスト(アウグストゥスの休日)が、後にカトリック教会によって聖母昇天の日と合体され、15日が祝日となった。

 フェラゴストにバカンスを楽しむ習慣は1920年代後半、ファシズム政権が低所得層を対象に避暑地行き格安列車を仕立てたのが始まりとか。今年も15日を境に市場もなじみの店もほとんど休業、路上駐車する車も激減し、幅広くなった通りを各国の観光客が闊歩(かっぽ)する。

 例年と違うのは、防弾チョッキをつけた兵士たちが自動小銃を抱えて、バチカン周辺や市内要所を固める姿。カトリック教会を敵とするイスラム・テロへの警戒だが、局所的な降雨もあり、町に残った市民にとっては妙に「冷めた」フェラゴストとなった。 (佐藤康夫)