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米ニューオーリンズ 葬儀彩る音楽と踊り

2015年10月28日

 美しい音楽について、ジャズ界の巨人ルイ・アームストロングは言った。「ニューオーリンズの葬式を見てほしい」

 黒人の多い南部の街で受け継がれる葬儀は、2段階に分かれる。棺(ひつぎ)を抱えた遺族の列が、賛美歌などで故人の死を悼みながら墓地まで歩く。これがファースト・ラインだ。

 見る人を引きつけ、楽しませるのは、埋葬後に街をパレードするセカンド・ライン。くびきを解かれたように、軽快なリズムに乗ったトランペットの音が響き、参列者が踊る。葬儀であることを忘れそうな明るい雰囲気だ。

 サックスを吹いていた男性が教えてくれた。「自由を奪われた黒人奴隷にとって、死は祝福の時だった。魂の解放と、その先の将来を祝うのさ」

 そんな風習が残る音楽の都を強烈なハリケーン「カトリーナ」が襲ったのは10年前の8月。市内の8割が冠水する壊滅的なダメージを受けた。

 街を歩けば、まだ傷痕が目につく。だが住民の多くは「復興と呼ぶ時期は終わった」と10年の節目を祝福していた。セカンド・ラインが始まっているんだと。 (北島忠輔)