2015年10月26日
英国の作家ジョージ・オーウェルの著作「ウィガン波止場への道」は1930年代、英中部の炭鉱町ウィガンの労働者を追ったルポルタージュだ。戦争と恐慌で重い空気に覆われる町をオーウェルは書いた。
それから80年。ウィガンは、海を渡って英国にたどり着いた難民・移民たちが送り込まれる町の一つになっている。白人中心の小さな町のあちこちで、シリアやエリトリアを逃れた人々が息を潜めて暮らしている。「ウィガンに来るとは予想しなかったでしょう。彼らに選択肢はないんです」と地元支援団体のスタッフは言う。
2年前、シリア北部から一家で英国に逃れたマルワン・ビリさん(50)に「日本は難民を受け入れないのか」と問われた。大陸の先の島国まで来たい人なんているの-と疑問を口にすると、ビリさんは真剣なまなざしで答えた。「私たちは安全な所で暮らしたいだけ。日本が受け入れるのなら喜んで行くさ」
距離も場所も、彼らには問題ではないのだ。米国もオーストラリアも大規模な受け入れを表明した。日本も「遠い国の話」では済まない時期に来ている。 (小嶋麻友美)