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カイロ 犠牲祭で実感した命

2015年11月02日

 年に一度やってくるイスラム教の犠牲祭が9月下旬にあった。日本でいえば、正月といったところだろうか。4日間続く犠牲祭前には、神にささげられる羊が街中にあふれる。

 当方も日本円にして1頭5万円ほどで羊を購入した。イスラム教で決められている作法にのっとり、刃物でのどをかき切るという方法で羊をほふってもらった。

 3時間ほどかけて解体作業を行った後、世話になっている支局の助手や自宅の門番たちに肉を配って回った。助手は羊肉を自宅に持ち帰り、においを抜くと同時に軟らかくするためにゆでた後、オーブンで焼いていただいたそうだ。

 犠牲祭で最も印象に残ったのは、やはり解体時の光景。日ごろ目にする機会が少ないこともあってか、羊が息絶える姿に、人の命が多くの動植物の命に支えられていることをあらためて実感させられた。

 犠牲祭後、支局でそんな話をしていると、助手が突然真剣な表情を浮かべて主張した。「そう実感することは非常に大切だと思う。年に一度と言わず、来月もやりましょう」。丁重にお断りしたのは、言うまでもない。 (中村禎一郎)